住宅ローンの支払が難しくなった時、売却してローンの完済を目指せればよいですが、買い手に所有権が移るので引っ越ししなければなりません。また、売却代金でローンを完済することができず、残債を返済するお金がない場合には、売りたくても売れません。
かといって、何もせずに住宅ローンの返済が滞れば、競売となってしまいます。
この競売を避けるための方法の一つに親族間売買があります。これは親族に自宅を買ってもらい、この購入代金でローンの完済を目指すものです。今回はこの親族間売買のメリットやデメリットなどについて解説します。
親族間売買では買い手が親族ですから、買い手の親族が承諾すれば、売却後も自宅に住み続けることができます。
その際の賃料も低いものに設定できる可能性もありますから、売却後の生活の維持もしやすくなります。
引っ越しをしなくて済めば、会社の通勤にも影響がありませんし、子どもも転校させずに済みます。
そして、売買取引においても取引価格を調整しやすく、住宅ローンを完済できるように高めに購入してもらったり、残債に余裕があれば、逆に買い手側の負担を減らすために低い取引価格にすることもできます。
ただし、売買価格の調整については注意が必要で、市場価格との乖離がある値段で売買した場合、贈与税などがかかる可能性もあります。
競売についてはこちらの記事を参考にしてください。
(関連記事)競売とはどんなもの?デメリットやリスクについて知っておこう
親族間売買では思わぬ税金がかかる可能性があるため注意が必要です。
不動産を売却して利益がでたときは所得税がかかる可能性があります。マイホームの売却の際には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」などの特例が設けられており、この特例を利用すれば譲渡益から3,000万円を控除できるため税負担を大きく軽減できすることができます。
しかし、この特例は親族間取引で濫用されることを避けるため、近しい親族間の取引では適用を受けることができないなどの要件が設けられています。親子や夫婦など特別な関係でないことが要件の一つとなっており、「特別な関係」には生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人などが含まれます。
逆に、買い手となる親族の負担を下げようと市場価格よりも安い値段にしてしまうと、今度は売り主から買い主に利益の供与があったとみなし、買い手側に贈与税が課税される可能性があります。市場価格と取引価格の乖離分を利益の贈与とみなし、ここに課税されることになります。
取引価格が高くても安くても問題が生じる可能性があることに留意し、個別の取引において問題が生じないか、生じるとすればどのように回避すべきか、不動産取引に明るい税理士に確認するとよいでしょう。
特に親しい関係となる親子間の売買で子どもが買い手となる場合、金融機関にローンの相談をすると担当者に難色を示されることがあります。
親のローンを子どもが肩代わりするような形となるためで、金融機関はこのような融資案件に否定的になることがあります。
また、当然ですが買い手となる側が住宅ローンを組むことに難色を示すこともあるでしょう。
住宅ローンは借金ですから、自分の人生で大きな負担を背負うことになります。
家庭を持っていれば家族の反対に合うこともあるかもしれません。
自己資金だけで購入できるようにと売買価格を引き下げると、先ほど説明したように贈与税が生じる可能性があります。
親族の中でも子供は最も相談しやすい相手かもしれませんが、税金が生じたり、住宅ローンが利用しにくいという問題があるのです。
オーバーローンの場合は売却代金で住宅ローンの残債を返済することができません。完済する目処がつかない場合は、親族間での任意売却の手法を取る必要があります。
任意売却は競売を避ける最後の手段として機能しますが、親族間売買では任意売却を認めないとする債権者もいます。
特に債務者の子どもが買い手となる事案で任意売却を認めてもらえないケースが多く、債権者の承諾がない以上は任意売却を実施することができません。
そうなると親族間売買の利点が失われることになりますが、競売を避けるためには仕方がないので第三者の買い手を探すしかありません。
引っ越しを避けたい場合は第三者でリースバックが可能な買い手を探す必要があり、これには相当の時間を要すことがあります。
(関連記事)任意売却とは?基本的な仕組みやメリットについて
(関連記事)リースバックとは?成功の秘訣を探る
今回は親族間売買のメリットやデメリット、問題点などについて解説しました。
親族間売買は、競売を避けるための手段の一つとして機能し、融通の利く親族を相手として取引ができる利点がある一方、税金面で注意が必要なことやローンを組みにくいことがある、任意売却ができないことがあるなどの懸念材料もあります。
いずれにしても親族間売買を検討する場合は多方面の懸念事項を総合的に勘案する必要があり、ノウハウや専門知識が求められます。
当センターでは難しい不動産売却事案でも、専門知識を有する税理士や弁護士等と協力して問題解決のお手伝いをさせていただいております。お気軽にご相談ください。