競売は市場価値よりもかなり安い金額で買われてしまうなど、住宅ローンの債務者にとって大変な不利益を被るものですから絶対に避けなければなりません。しかし、任意売却に間に合わなかったなど、心ならずも競売が実施され落札が決まった場合、最終的に自宅の所有者は強制的に追い出されることになります。
本章では競売落札が決定してから自宅を退去させられるまでの流れや期間について詳しく見ていきます。
競売落札が決定してから債務者が自宅を追い出されるまでに残された期間は約二ヶ月ほどです。
その間に新居探しをしなければならないので、しっかり準備をしていないと住むところが無くなってしまいます。
実際の事案では残された期間に多少のすれが生じますが、概ねの目安として覚えておき、万が一の際には必要な行動をとれるようにしておきましょう。
次の項からは競売落札から強制退去までの流れを、それぞれの段階で残されたリミットを確認しながら見ていきます。
競売で最高価格を付けて落札した入札者は、裁判所に代金を納付することで物件の買受け人としての立場を取得します。
この段階から強制退去までに残されたリミットは残り二ヶ月と考えてください。
買受け人が代金を納付すると、法律上の所有権が債務者から買受け人に移ります。
したがって、この段階でまだ債務者が自宅に居座っているとすれば、それは不法占拠ということになります。
債務者は「不法占拠者」という扱いになるので、心持ちも良いものではありません。
不法占拠者とならないためにも、できれば速やかに転居するのが理想です。
法律上の所有権が買受人に移行しても、登記簿上の所有権者の変更手続きも別途必要です。
裁判所は代金が納付され法律上の所有権が買受け人に移ったことを確認すると、法務局に対して職権で所有権移転登記手続きを申請します。
この手続きは裁判所経由で進められるため、債務者側のリミット的には変動を生じさせるものではありません。
登記簿に所有権者変更が反映されれば、名実ともに物件は買受人のものとなります。
落札者は所有権が自分にあるからといって、新たな所有者が旧所有者(債務者)を力ずくで追い出すということはできません。
こちらも法律上のルールに則って進める必要があり、そのための手続きとして新たな所有者は裁判所に引き渡し命令の申し立てを行います。
裁判所がこれを認めると、債務者の元には引き渡し命令書が送られてきます。
物件の引き渡し、つまり強制退去手続きは新たな所有者(債権者)vs旧所有者(債務者)というよりも、裁判所vs旧所有者(債務者)という構図になることをイメージしてください。
引渡し命令書が届いてから1週間が経過すると引渡し命令が確定します。
その1週間の間に引き渡し命令に対する不服の申し立てもできますが、理由もなく申し立てても却下されるだけなので意味はありません。
この時点で強制退去までに残されたリミットは約1か月半程度です。
引渡し命令確定後に、新たな所有者は強制執行の申し立てが可能になります。
強制退去までのリミットが残り1か月頃となる時期には、裁判所の執行官が債務者宅を訪れて物件を明け渡すよう催告を行います。
この時に、「1か月後には強制執行(強制退去処分)を実施する」旨が告げられます。
執行官による催告はいわゆる「最後通告」です。
都合が合わないから退去時期を延長してくれというような債務者側の都合で交渉することは一切許されません。
この段階で強制退去まで残り1か月ですから、もしまだ新居探しが終了していないのであれば急がなければなりません。
競売落札から各種の手続きを経て約二か月後、いよいよ強制退去処分が実行されます。
頑なに転居を拒んで居座ろうとしても自分の立場をより悪くするだけですので、速やかに不法占拠状態を解いて新居に移る算段を整えなければいけません。
強制退去処分当日にどのような動きがあるのかについては別記事で詳しく解説する予定です。
(関連記事)競売後に居座ることはできる?強制退去はどのように進められるのか
本章では自宅が競売にかけられ、落札が決定した後の流れを見てきました。
競売自体は強制的に行われるものですので、債務者側が何かしなければならないということはありません。
しかし、落札後は新たな所有者に所有権が移るので、不法占拠状態となることは知っておきましょう。
そこに住む法的な根拠がないわけですから、居座ったとしても約二か月後には強制退去処分となります。
通常の引っ越しにおける必要期間を考えた場合、二か月程度あればなんとかなりそうですが、住宅ローン問題を抱える事案では他方面の支援を得る手続き等にも時間がかかります。
家を取られたショックは大きいでしょうけれど、できるだけ時間に余裕をもって新居の確保を目指す必要があります。