マイホームの購入には多額のお金が必要ですから、多くの方が住宅ローンを利用して購入します。
資金が多額である分、返済も数十年スパンで長い期間をかけて返済していく必要がありますから、その間に様々な事情で収入状況が悪くなったり、支出が増えてローンの返済に支障がでることもあります。
そのような時には自宅を売ってローンを返済することも検討されますが、これが希望通りにいかないことが多いので、本章ではこの問題について取り上げます。
近代私法の三大原則の一つ、所有権絶対の原則により自分に所有権のある不動産は自由に売り買いができるのが原則です。
自己資金のみで購入した不動産であればこの原則通り自由に売買ができますが、住宅ローンを利用して購入し、まだそのローンが残っている場合は話が違ってきます。
まだローンが残っている自宅不動産は「抵当権」が付けられている状態のため、所有者といえども自由に売り買いすることができません。
ローンが残る自宅の場合、売却に先立って「アンダーローン」か「オーバーローン」かを見極めることが先になります。
アンダーローンの状態であれば契約上で工夫することで通常の売却が可能になるので、次の項で見ていきましょう。
ローンが残る不動産について、売却予想金額がローンの残債を上回るケースのことをアンダーローンと言います。
この場合、物件の売却代金でローンを完済することができるので、債権者の満足を得られるため売却が可能です。
ただし買い手との交渉時点ではまだ抵当権が付いたままですので、契約上で一定の工夫が必要です。
買い主の側は代金の支払いをすることで確実に抵当権の抹消を確認したいのが普通です。
お金を支払っても抵当権が解除されなければ購入する意味がないので、物件代金の支払いと、抵当権の抹消登記及び所有権の移転登記を同日に手配する手はずを組みます。
契約上でもこの点を記載し、売り手、買い手、住宅ローンを提供した金融機関、仲介する不動産会社などが一堂に会して、全ての手続きが同日中に終了されるように手配します。
これによって買い主は抵当権が解除された綺麗な物件を手にすることができます。
そして契約上では、無事に抵当権の解除が実現できない時は売買取引自体が無効になる(あるいは有効とならない)旨の取り決めをしておきます。
これによって買い手側はリスクを避けた売買取引が可能になります。
オーバーローンは、物件の売却予想金額が住宅ローン残債の額に届かないケースのことを言います。
この場合、不動産に付けられた抵当権を解除できないので通常の方法では市場に売りに出すこと自体ができません。
住宅ローンの支払いが苦しくなっている事案で、さらにオーバーローンの状態となるとローン債務者の方は首が回らなくなります。
売りたくても売ること自体ができず、そのまま放置すれば債権者は抵当不動産を競売にかける手続きを行います。
競売では市場価値よりも相当安く買われてしまうので、その資金で返せるローンも僅かです。
残ったローン残債はなお返済の義務があるので、債務者は大きな損をするだけでなく人生にも大きな重荷を背負ってしまいます。
オーバーローンの場合、速やかに任意売却の検討をしなければなりません。
債権者と話し合い、特別に抵当権を外してもらって市場で適正価格で売る特殊な売却方法です。
任意売却が可能な期間は限られているので、迅速な手配が求められます。
住宅ローン問題が絡み、競売となる可能性がある事案では不動産売却を考える際に相談する業者選びに特に慎重さが求められます。
住宅ローン残債の額と対象物件の市場価値が近似している場合、オーバーローンとなるかアンダーローンとなるかは不動産業者の査定次第で真逆になります。
アンダーローンだと思って売りに出したが、査定が甘めで割高感が強く出れば買い手が付いてくれません。
結局後で値下げが必要になるか、最悪時間切れで競売となってしまう危険もあります。
不動産価値の見極めに失敗すると大変なことになるので、住宅ローン問題に明るく、精度の高い査定を行える不動産会社に相談するようにしましょう。
住宅ローンが残る不動産の売却で問題になるオーバーローンとアンダーローンについて取り上げ、見極めの重要性や売却面への影響などについて見てきました。
売却の支障になるのはオーバーローンの方ですが、売却金額の見極めに失敗するとケースによっては競売の危険にさらされます。
住宅ローンの滞納が関係する事案は万一売却に失敗すると債務者の方の不利益が大きくなるので注意が必要です。
弊社では住宅ローンの返済が苦しくなった方のご相談を数多く受けておりますので、正確な物件査定の元、事案に応じた適切な対処法を提案させて頂きます。
経験豊富なスタッフが丁寧に対応させて頂きますので、ぜひお気軽にご相談頂ければ幸いでございます。