リースバックとリバースモーゲージは仕組みとして全く違うものではありますが、自宅に住み続けることができるという点では共通するため混同されることも多いようです。
今回はリースバックとリバースモーゲージの違いにフォーカスし、表にまとめた上で詳細を確認していきます。
リースバック | リバースモーゲージ | ||
① | 契約の性質 | 売買と賃貸借(買戻しをする場合は再売買契約も付帯) | 抵当権の設定による借り入れ |
② | 受け取るお金の性質 | 売却代金 | 借入金 |
③ | 利用できる人 | 個人・法人どちらも | 個人 |
④ | 所有権名義 | 買い手に移る | 変動なし |
⑤ | 対象不動産 | 制限なし | 居住用で主に戸建て |
⑥ | 保証人の要不要 | 不要 | 必要 |
⑦ | 親族の同意 | 不要 | 推定相続人の同意が必要 |
⑧ | 資金用途 | 制限なし | 制限あり |
⑨ | 任意売却との併用 | できる | できない |
まず、①の契約の性質ですが、リースバックは対象不動産の売却と賃貸借の契約が同時に結ばれます。また、将来の買戻しを約する場合は再売買契約も付帯することになります。
一方、リバースモーゲージは不動産の売却ではなくお金の借り入れをする契約であり、その担保として不動産に抵当権を設定するものです。
そして、②受け取るお金の性質ですが、リースバックで得るのは対象不動産の売却代金です。税務上は不動産の譲渡所得となり、所得税の対象になります。ただし、実際に税金が発生するかどうかはケースバイケースです。売却代金の受け取りは一括の他、分割の指定も可能ですが下のリバースモーゲージのように細かく支払いを分けて年金形式のように受領することは通常できません。
リバースモーゲージで受け取るのは借入金、つまり借金ですので、上記のような税金はかかりません。また、融資金の受領方法は一括受け取りも可能ですし、年金形式で分割で受け取ることもできます。
③の利用できる人については、リースバックでは特に制限はなく個人でも法人でも利用できます。
リバースモーゲージの方は自然人の相続を想定したものであるため、必然的に利用は個人に限られます。
④の所有権の名義に関しては、リースバックは売買取引であるため、対象不動産の名義が買い手に移ります。そのため、登記簿上の所有権者の欄に買い手の名前が載ります。
リバースモーゲージは売買取引ではないので、所有権名義に変動はありませんが、抵当権を設定するため登記簿には抵当権者として融資元の金融機関の名前が載ります。
⑤の対象不動産としては、リースバックの方は特に制限が無く、居住用不動産の他に工場や店舗なども対象になります。
リバースモーゲージの方は居住用不動産のみで、主に戸建てが対象です。
マンションは対象にならないことが多いですが、最近はマンションも可とする金融機関が出始めています。
⑥保証人の設定については、リースバックは売買取引のため保証人は不要です。
リバースモーゲージは融資取引となるので、一般的に保証人の用意を求められることが多いです。
⑦親族の同意について、リースバックを利用することについて親族の同意は不要です。ただし、リースバックでは親族に買い手となってもらい、第三者に不動産がわたるのを避ける利用方法もあります。その場合は取引当事者となるので当該親族の同意が当然必要です。
実際、リースバックを検討するにあたり親族の協力を得て実行することも多く、賃料を低めに設定して負担を抑えつつ、ローン残債の精算を続けていくための余力を維持することができます。
リバースモーゲージの方は、借入金の返済のために将来相続が起きた際に自宅を売却して返済の原資を作ることになります。そのため利害関係を持つことになる推定相続人の同意を求められます。
⑧資金の用途に関しては、リースバックの方は特に制限はありません。所得税がかかる場合、不動産を譲渡した翌年の2月16日から3月15日までの間に申告納税が必要になるので、納税資金の確保に注意しておけば、後は自由に使うことができます。
リバースモーゲージに関しては、金融機関との契約内容にもよるものの、一般的には老人施設の入居費用や医療費にしか使えないなど、用途が制限されることが多いです。
⑨の任意売却との併用については、リースバックの方は併用可で、むしろ積極的に検討されることがあります。
一方、リバースモーゲージは取引自体が売買取引ではないため、任意売却との併用はできません。
リースバックやリバースモーゲージについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(関連記事)リバースモーゲージとはどんな制度?メリットやデメリットは?
今回ははリースバックとリバースモーゲージの違いを解説しました。
取り引きの性質や利用できる人、所有権名義の変動など、色々と違いはありますが、大切なことは個々人のおかれた状況によってどちらを検討すべきか、専門家と共に精査することです。
資金を要する理由や家族、親族との関係など、総合的な状況を踏まえてより望ましいのはどちらであるか検討が必要です。
当センターでは不動産の利用に関して総合的なアドバイスが可能ですので、資金確保のために不動産の活用をお考えの方はお気軽にご一報を頂ければと思います。