任意売却は住宅ローン問題をかかえる自宅売却で競売を避けるための有効な手段となります。本来オーバーローンのために売却できない不動産でも、特別な手配をして任意売却を可能にできれば多くの不利益を回避することができます。
任意売却自体が非常に難度の高いものですが、売却対象の不動産が共有状態となっている場合はさらに難度が上がります。本章では共有名義不動産の任意売却を可能にするための手順や方法を見ていきます。
共有名義不動産というのは複数人で共有されている状態の不動産を言います。
各共有者は持ち分という単位で所有権を保持しますが、登記にはこの持ち分も反映されます。
夫婦で自宅を共有する場合、例えば夫の持ち分が二分の一、妻の持ち分が二分の一などとして登記に反映されます。
夫婦で半分ずつ資金を出し合って自宅を購入する場合、通常は上記のように持ち分も等分となります。
出資金額にかかわらず、あえて持ち分比率を変えることも可能ですが、その場合は出資金額に比して多くの持ち分を獲得した側に持分が贈与されたとみなして贈与税が課税されることがあります。
共有状態となっている不動産を売却する場合、持ち分を保有する全員の同意が必要です。
これは任意売却においても変わりなく、必ず共有持ち分を保有する全ての人物の同意をとりつける必要があります。
あくまで権利者の頭数で全員の同意が必要ですので、仮に夫が持ち分の9割を保有していたとしても、他方1割の権利を有する共有者の同意を取らなければいけません。
若いご夫婦の場合、夫婦のどちらか、あるいは両方のご両親から資金援助を受けて自宅を購入することもあります。
その場合ご両親にも共有持ち分が設定されていると思いますので、そちらの同意も取り付ける必要が出てきます。
任意売却では様々な事案を扱いますが、難度の高くなるケースとしては離婚絡みの事案が挙げられます。
次の項で代表的な例を見てみましょう。
自宅が共有状態であっても、離婚が伴わないケースで共有者である夫婦の仲が良ければ意見の一致が容易なため問題は起きないことが多いです。
競売となれば市場価値より相当安い金額でしか買われないので、その分多くのローン残債が残り、その後の家族の生活が苦しくなることについて共通意識を持つことにより、任意売却に向かって一丸となることができるからです。
しかし、離婚絡みの事案の場合、夫婦間に溝ができていて話し合いが難しいようなケース、あるいは夫婦のどちらかが引き続き自宅に住み続けることを希望し、売却を望まないケースなどが出てくるので、その場合任意売却の難度が上がります。
そもそも任意売却は住宅ローン債権者の同意を取り付けなければ実施が不可能ですので、こちらの解決に注力したいところ、共有不動産を扱う場合は共有持ち分を有する権利者の承諾を取り付ける必要も出てくるので大変です。
この場合、任意売却を進めなければ競売となってしまい大きな痛手を被ること、ローンを抱えたまま離婚して片方が自宅に住み続けるのは大きなリスクが伴うことなどを説明し、理解を得ていくという作業が必要です。
丁寧に説明すればほとんどのケースで理解を得ることができ、任意売却に向けた協力を得られるので問題はありませんが、けんか別れで夫婦間の話し合い自体ができないなどの場合は工夫が必要です。
夫婦間に大きな溝ができてしまい話し合いが難しい場合、事案に応じて工夫が必要です。
面と向かった話し合いは難しいとしても、不動産を売却すること自体には反対が無いようであれば、ご希望により弊社のスタッフが任意売却についてご説明することができます。
例えば、妻が住宅ローンの契約において夫の連帯保証人になっているようなケースでは、夫がローンの支払いができなくなれば妻に請求が来ます。
妻が肩代わりできなければ結局自宅は競売にかけられてしまい、残った多くの残債の責任も連帯保証人の立場で負うことになります。
こうした不利益を避けるには任意売却を成功させる必要があるので、説明を丁寧にほどこすことで多くの場合理解を得ることができます。
財産分与の額などが絡んで複雑な交渉が必要な場合、弊社では提携する弁護士が対応することも可能ですので、込み入った事案でもお気軽にご相談頂ければと思います。
本章では共有不動産の任意売却について見てきました。
共有状態の不動産でも任意売却は可能ですが、共有持ち分権者の同意の取り付けが必須ですのでこれをクリアしなければなりません。
問題が起きやすい事案としては離婚が絡み相手方との話し合いがスムーズにいかないことが予想されるケースです。
その場合でも丁寧に説明することで問題をクリアできることが多いので、早めに弊社にご相談頂ければ幸いです。