不動産を相続した場合、、不動産は分割しにくい性質があるため、遺産分割がしやすいように換価処分(売却してお金に換えること)することあります。ただし、住宅ローンが残る物件の場合は、簡単にいかないこともあります。今回は、住宅ローンが残る実家を相続した場合の売却可否を検討する上で、特に被相続人が団体信用生命保険に加入していたケースに焦点を当てて解説します。
団体信用生命保険は、一般的に「団信(だんしん)」と略されますので、以下この呼称で進めます。
「団信」は生命保険の一種ですが特殊な性質を持ち、住宅ローン利用者が相互にリスクを分担する機能を有します。
団信加入者が死亡したり高度の障害を負うなどした場合、残った住宅ローンが保険によってカバーされる仕組みです。
住宅ローンを提供する金融機関がリスクを避けるために団信の加入を義務付けることがあり、その場合は加入しなければなりませんが、住宅ローンの種類などによっては団信に加入しない場合もあります。
団信加入者が死亡した場合は残った住宅ローンの残債が保険によってカバーされるため、相続人が残債の補填を負担する必要はありません。
保険でローンの完済が可能になることから、金融機関に抵当権を外してもらい通常の売却に望むことができます。
故人が団信に加入していた場合、この手続きは保険会社ではなく住宅ローンを提供した金融機関を窓口にして行います。
まずはローンを振り出した金融機関に相続が起きたことを伝え、「団信弁済届け」及び「死亡証明書」という書類を受け取ります。
死亡証明書は一般的な死亡診断書(医師が作成する)で換えることもできますが、手続きの確実性を高めるために専用の死亡証明書を使用するのがお勧めです。
上記二つの書類に、故人の死亡が確認できる住民票を加えて一式の申請書類とし、ローンを提供した金融機関に提出します。
保険会社は金融機関からこれらの書類を受け取って審査を行い、保険金の支払可否を決定します。
審査に問題なければ、約1か月ほどして審査可決の連絡が入ります。
団信から支払われる保険金は保険会社からローンを提供した金融機関に直接支払われます。
相続人に支払われるものではないため、相続財産に組み込まれることはなく相続税の負担が増えることはありません。
ただし、住宅ローンを負債として相続財産から控除することはできません。相続人が返済する必要はなくなるからです。
団信によって住宅ローンを完済したら速やかに抵当権の抹消登記を行っておきましょう。
法律上は住宅ローンの完済が済んだ時点で抵当権の効力は消えますが、これを登記に反映させておかないと様々なリスクが発生します。
特に相続不動産の売却が必要な場合は登記を確認する手順が必ず入りますから、抵当権の抹消登記は必須となります。
相続事案の場合、所有権の名義を相続人に移す相続登記も並行して行う必要があり、二つの手続きを合わせて考えた動きが求められます。
登記手続きは必要書類の準備などで手間が多いため専門家に手続きを依頼することが勧められます。
当センターでは相続不動産の売却支援を行っており、各方面の専門家と協力して問題解決や事案の処理を進めて参りますので、お気軽にご相談ください。
基本的に、故人が団信に加入していれば保険金で住宅ローンの残債はカバーされるので相続人の方の負担はありません。
しかし、中には相続人の予想に反して保険金が支払われないケースもあるので注意が必要です。
例えば、亡くなった方が生前に住宅ローンの支払を滞らせていたような場合などがあたります。
住宅ローンの支払を一定期間滞らせると、これを原資にした団信の保険料の支払いがされなくなり、団信の契約が失効してしまうケースがあります。
そうなると相続人が期待した保険金の支払いがなくなり、住宅ローンの残債がまるまる残った状態の家を相続することになります。
こうなると、故人が残した他の保険金で残債の支払が可能かどうか、無理ならば返済資金をどう調達するかを考えなくてはなりません。
相続事案ですから他の相続人と遺産分割の調整も絡み、非常に高難度の事案となります。
相続物件の売却ができないと相続人は、住宅ローン返済の負担を抱えてしまうため、場合によっては相続放棄を考えなくてはならない事態となります。このようなケースでも当センターがお力になれますので、ぜひご相談ください。
今回は住宅ローンが残る実家を相続した際の売却について、故人が団体信用生命保険に加入していた場合の手続や税金面、注意点等について見てきました。
基本的には団信保険によって住宅ローンは完済できるので、この点で相続人は安心でき、相続税の面でも影響はありません。
売却を考える場合は抵当権の抹消登記を忘れずに行いましょう。
故人が生前に住宅ローンの支払を滞らせていた場合、相続人の予想に反して保険金が下りない事態もあり得るので、困った時はできるだけ早く当センターにご相談ください。